2013年 10月 30日
何が取り柄って、病気をしない。 風邪と思えばすぐさま、ありとあらゆる民間療法と魔術を駆使して防衛する。 めったなことでは医者にかからない。 おかげで過去の勤め先では皆勤であり、唯一の欠勤は喪であった。 たまの発熱も、持病の腸ねん転も100%休日に起きる。 翌出勤日は青い顔してシラっと出ていた。 この日曜の夕方、首の付け根の腫れに気づいた。 ゴルフボールを半分に切った程の大きさ。 けっこうなグリグリ。 しかし、痛くない。 扁桃腺も腫れていない。 何だろうと思い、ググる。 知るに堪えない症状が山のように出てくる。 恐くなってググるのを止める。 翌日、近所の病院へ行く。 すると、診るなり「うちでは検査できないので、紹介状を持って大きい病院へ行ってください。」と言われる。 えらいことになったかもしれない。 病気慣れしていないため、紹介状の重みも軽みも分からないが、えらいことっぽいことだけは分かった。 不安と興味の入り混じる中、大きい病院へ急ぐ。 紹介状を持っていることは一種のステイタスで、ちょっぴりイイ待遇でもしてもらえるのかと仄かな期待をした。 するとそこは「紹介状を持っている患者限定」の病院であった。 残念と言うべきか、スペシャル待遇はなかった。 いまどきの大きい病院と言うのはなんですな、ホテルのような、ちょっとしたエンタメ施設というか、システマティックに管理されていた。 診察券をそこかしこでピポパすると、ハイ次はあっちこっちと、円滑に誘ってくれる。 シアトル系コーヒーショップまでが出店していた。 案内のお姉さんがヨドバシカメラ並に配備されていて迷子にならない。 診察室前でどんだけ待つんかい、との不安を払拭するべく「もうすぐあなたの番ですよ」的な表示も出て、無駄が少ない。 シロウトのわたしからすれば感心しきりだったのだが、そこかしこでクレームを述べている患者を見た。 そりゃ、病気となればイライラもするし、それなりにあれなんだろう。 いろいろとね。 受付を済ますと、まずはお小水とレントゲンと採血、と言われる。 ニキビをつぶすことは大の好物だが、スプラッターやゾンビ系はからきしダメ。 時代劇の殺陣シーンは目をつむる。八ツ墓村はだいじょうぶ。 チクリは我慢できるが、自分の血は見たくない。 あさっての方角を向いて採血に挑む。 腫瘍内科を経た後、急きょ耳鼻科の診察に割り込ませてもらい、グリグリの超音波診断をすることとなった。 「念のため組織を採ってみましょうか?」と提案され、条件反射で「よろこんで」と返事をする。 まさか首に注射針を打たれるとも知らず。 グリグリの中身をニューっと吸い取るとも知らず。 目の前にぶっとい針が襲ってきた。 心の準備が出来ていなかったので、ほぼ失神状態だった。 しかも、最初ほとんど採れず「もう1回いいですか」と提案される。 半失神中のまま「ふぁい」と返事し、再度首にニューっとやられる。 ちなみに本日の検査結果では、一応シロだった。 異常ないのに、何でしょうね、グリグリですね、とのこと。 とりあえずホッとする。 組織採取の結果は後日あらためてとなった。 そしてお会計は機械がすると言う。 受付横にATMのような機械がズラリと並んでいる。 わたしは普段お現金をほとんど持ち合わせない。 スイカがあればなんとかなる人生を送っている。 現金300円だけでもバリ島からふつうに帰って来られる。 現地友人が心配して、金を貸そうかと言うのを毎度自慢げに振り切る。 紹介状だし、大きい病院だし、ということで、気張って財布に数千円を仕込んでおいた。 血は採ったけど投薬もないし、まあなんとかなるっしょ。 診察券を会計マシンに差し込むと、金額が表示された。 軽く、万円を超えていた。 非情だ。 たまげて本気で失神しかけた。 会計マシン前に急患1名様。 たまげたシロウト向けにだろうか、クレジットカード払いが選択できた。 てか、ほかの選択肢が今のわたしには、ない。 なんだよ、そういうことかよ。 ちっ。 そこかしこでクレームをつけていた患者さんのお気持ちの一端が、理解できる。
by kerokikaku
| 2013-10-30 22:38
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