2014年 02月 07日
山男
出版社開催のネパール登頂イベントのために甥っ子が上京していた。
前乗りで二泊三日。一人で来るのは初めてだ。

よちよち時代から祖母に連れられたトレッキングが元凶か、彼は完全なる山男になってしまった。
家族の必死の制止をものともせず、日本アルプスを父親と共に登りまくってる。

富士山は何度も。しかも厳冬期。
年間登山スケジュールがぎっしり。来年の分もぎっしり。

来月からはネパールへ単独登山旅行する。

それがまだ16歳だったりする。

ケツの青い、シックスティーン。

山岳部のある高校に入ったが、彼のレベルではなかった。
さっくりと辞め、別の通信校へ編入し、おかげでバイトと山だけの人生を謳歌している。

ネットで何でも買える時代の世代。
東京の有難味もスペシャル感も非常に薄い。

でもまあせっかく来たのだし、うちに居てもなんだし、アウトドア街・神保町を教えてみる。
超メジャー店ではない、ちょっぴりマニア店に放流を試みる。

数時間後、待ち合わせ場で戦利品を抱いてニヤニヤしていた。

ネットより安く買えた正規品、破格で買えたハンパ品。
相当ハイレベルな知識者(ひらたく言うと山オタク)である彼のお眼鏡にかなったらしい。

曰く、正規で数千円のものが、SALEハンパ品で100円だったという。
歩きながら我慢できず、買ったものを出して見せてくれた。
見たところで何のこっちゃらわからないが、こちらとしてもとりあえず嬉しい。

ついでに秋葉原にも行ってみる。
海外登山なので、スマホやPCの充電パーツがかなめとなる。

ヨドバシ一網打尽かと思っていたが、ふと見ると時代を超越した小さな一角があった。
好みかどうかは知らないが、物見遊山にと誘ってみた。

ここはどこ。

日本語ペラペラガイジンさんの店。古PCを解体した部品がズラリ。基盤もコードも何でも分解販売。
400円のLED電球。最新スマホ。三葉虫化石もある。

30年以上ホコリを叩いていないと思しき、昭和から時間の止まったパーツ店。
駄菓子もかくやという値段のパーツが並ぶ。
店主の居場所には、商品とも私物とも判別しがたいモノ群がうず高く重なっている。

彼は「わけがわからん」とぶつぶつ言い、頭を抱えて始めた。
早く出たいのかと聞けば「めっちゃおもろい」とのこと。こんなものまで売っているのか、と。

うまい棒もしくはチロル価格のおびただしい在庫数。
「この店はいったいどうやって儲けているのか」と社会のミステリーを感じていた。
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アジア圏の市場はこんなだよね。

グイグイ進み、目が回った、疲れたというわりに、3時を過ぎても昼飯を食べようとしない。
あたしゃペコペコ。

配線カスタム用のジャックを探しているのだった。
1ツ100円かそこらの。

別のパーツ街でまたズッポリハマる。
何軒も回った末に、ようやく2ツ購入の慎重派である。

帰路、彼を観察するが、車窓も街も人も一切見ていない。
ポケットに入れたコードやら紐やらを嬉しそうにいじった後は、スマホで山用品情報を調べている。
脳みその99%が山とバイトで占められている。
なかなかの人物である。

そして一夜明けた。

寝ても覚めてもの検討の結果、100円のなにがしかを買い足すために、神保町と秋葉原へもう一度アタックすると言い出す。

これは費用対効果としては最低の事態。
だが、もし買えなくても、変なのつかまされたとしても、迷子になっても、きっと今の彼にはすべてが戦利品。

伯母は付き添わないことにする。
と言うより、ついて来てとも言われなかった。
さあ、右も左も分からない街へおひとり様で行っていただこう。

東京在住の身内として、乗換方法を机上で何度もシミュレーションしてやる。
オレンジの快速から、向かいのキイロの総武線に乗り換えて。
ほんとうは10m後ろから尾行したいキモチをグッと抑え、放流した。

そんな若いうちから登りまくっているんだから、どこか企業と提携して、ワッペン貼って登頂画像載せて、スポンサードしてもらえばいいのにと提案したが、今は山で食べていける世の中じゃないと一蹴された。

初めての一人東京16才。
スカイツリーも東京タワーも新宿も渋谷も原宿も、完全に彼の埒外。

なんかすごいな、と思った。

ネパール土産は無事と岩塩を頼む。
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by kerokikaku | 2014-02-07 23:38 | ものすごくその他 | Comments(0)


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