人気ブログランキング | 話題のタグを見る
2015年 02月 20日
「正藍型染師 田中昭夫の布 頒布会」への道-2.5 山を焼く
川口、田中紺屋の囲炉裏端にて。

なにげなく見ていた灰。
焼いた炭じゃなくて、その周りの灰。
「正藍型染師 田中昭夫の布 頒布会」への道-2.5 山を焼く_d0182119_16411933.jpg

ふつう、何気なく見ますよね。
「正藍型染師 田中昭夫の布 頒布会」への道-2.5 山を焼く_d0182119_1642135.jpg

「山を焼いて持って来た」とおっしゃる。

そう言われても「はてな?」となりますよね
こちらは何のこっちゃわからない。

田中さんはそんなわたしを意に介せず、楽しそうに話はじめた。


「秋田の同級生がさ、山を持っててさ」

「へえ(そんなこともあるだろう)」

「その山を焼いて灰を作ってさ、ドラム缶5杯分、持って帰ってきたんだよ」

「はい?」

「あの時、山火事起こしちゃったらさ、オレ、そん中に飛び込まなくっちゃならなかったな(笑)」

「はいぃぃ?」


「囲炉裏用」の灰だと思って、無邪気に聞いたわたしが間違っていた。
そりゃそうでしょう。
そもそもは「正藍染に使う灰汁用」の灰なのだ。

消石灰は使わず、あくまでも木灰を使う。
昔の藍染めはそうだったんだから。

「買っていたら、とてもじゃないけど出来ないよ」

木灰を買うとたいへんな経済になる。
あれだけの正藍染をするためには、相当量が要る。

でもここ川口じゃ木灰が作れない。
ならば実家のある秋田へ帰って作る、ということだったらしい。

でも秋田ならいいのか?
牧歌的な時代の話として伺った方がよさそうだ。

山に入り分け、トタンで枠を作り、その中でナラの生木を焼く。

「枯れた木を燃してもダメなんだよ、生木を焼かなきゃアルカリの高い良い灰はできない」

ドラム缶5杯の灰を作るにはどれだけのことか。
一晩では(山を!)焼ききれなかったそうだ。

その後、灰をドラム缶に入れてトラックに積み、秋田から川口へ運んだという。

「昔だったから出来たけど、今ならだめだろうな」

「で、でしょうねぇ。」

ちょっと、わたくしの想像を超えてしまい、生返事でしかご対応できなかった。
「正藍型染師 田中昭夫の布 頒布会」への道-2.5 山を焼く_d0182119_17552842.jpg

「藍染めってのは、たいへんなんだよなあ(笑)」

わたしくらいになっちゃうと、「ははは」と一緒に笑うしか方法がなかった。
どうぞみなさんもご一緒に。

インディゴピュアを使わず、正藍染に憑りつかれた田中紺屋だもの。
推して知るべし。
「正藍型染師 田中昭夫の布 頒布会」への道-2.5 山を焼く_d0182119_1752052.jpg

昨秋、田中ツアーの頃。
田中さんについて、素晴らしい正藍型染布について。
少しだけわかったつもりだった。

しかしパーソナリティについての把握が全く甘かった。

無骨だとか、頑固一徹だとか、問合せ電話に出ない(汗)とか。
ニュアンスはわかっていたつもりだったが、全然わかっていなかった。
「正藍型染師 田中昭夫の布 頒布会」への道-2.5 山を焼く_d0182119_1756235.jpg

こういうことです。
本物がやりたくて、灰も作っちゃったわけです。

そりゃそうだわな。

ああ。
「正藍型染師 田中昭夫の布 頒布会」への道-2.5 山を焼く_d0182119_17375221.jpg

やれやれ。

当ゲリラ関係者として、恥ずかしながら今更ながら。
田中昭夫の、正藍型染に対する執着の強さに、震える。

by kerokikaku | 2015-02-20 18:00 | 正藍型染師 田中昭夫


<< あとちょっと      「正藍型染師 田中昭夫の布 頒... >>