2015年 12月 22日
ご指名
朝いちばんに歯医者の予約をとった。

虫歯ではない。
「半年に一度でいいですよ」と言われているが、3か月ごとに定期健診&クリーニングをしてもらう。

行けば必ず何がしかの不備が見つかる。
大ごとになる前に治してもらい、日々の歯磨きはテキトーにちょろまかす。
こまめな検診でアベレージを保つ、真面目なのか不真面目なのか判別のつかない患者である。

歯医者はだいじ。
このセンセイ、にたどり着くまでが長い道のりであった。

10年以上前、知人の紹介で行った歯科での利発そうな若い女のセンセイ。
そのセンセイが素晴らしくビンゴであった。

慢性的にむずがゆい箇所を、容赦なくゴリゴリしてくれる。
歯間からすぅっと血が出るが気にしない。
ああそこ、どうして分かるんですかと、へんな声が漏れそうなほど、要点をうまくついてくれる。

口をあんぐり開けた至福の時間よ、フォーエバー。
いつもトロ目になって思う。

センセイがその歯科を退社と知った日「次が決まったら教えて下さい」と慌てて連絡先を書いたメモを渡した。
高校の放課後の出来事のようだった。

1年後、センセイは別の歯科で復活した。
そこは遠方だったが、厭うことなくいそいそと伺い、トロ目の密月が続いた。

ある日センセイがご懐妊・出産と知った。
産休直前にトロ目検診に行き「戻られたら是非お知らせを」と心ばかりのお祝いの品を渡した。
ちょっと涙が出た。

産休明け、センセイがお返しをくださった。
赤ちゃんがいるので不定期にはなったが、また復活と聞き安堵する。

この半年、何度も検診タイミングを計るが、センセイと私のスケジュールが合わなかった。
10月もいっぱい、11月もダメ、ならば年明けしかない。

「センセイは今月で退職になりました。1月は別の者が担当します」
目の前が真っ暗になった。

どうしよう。
センセイはどこの歯科に行くのだろう。
是非わたしの個人情報を、と受付の方に言うのはまずいか。
美容師が独立する時、お客さんを元の職場からごっそり引き連れるのと同じで、センセイに妙なご迷惑がかからないか。
それとも子育てに専念の退職なのか。

一瞬の逡巡結果「では違うセンセイで結構です。お願いします」と、うその平静を装ってしまった。
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電話を切ってからめまいがした。
後悔もした。

これで切れてしまうのか。
しまうんだね、きっと。
センセイの、美しく見事な手業が走馬灯のように蘇る。

アカスリもしかり。
おそろしく代謝がよいため、ここでははばかられる量がすぐたまる。

幾人ものアカスリ師を経て、このヒト、というアカスリ師に出会った。
数か月に一度だが、その日は前日からウキウキだ。

何も言わなくても文字通りかゆいところに手が届く。
これでもかという位、力強く丁寧にすってくれる、年配の女性のアカスリ師。

ぜったいにご指名する。
彼女を指名して毎週来る客も多いらしく、それ、すごくよくわかる。
出来るものならわたしだって毎週やりたい。
別のヒトを良しとせず、指名が取れなければまたにする。

ある日ウキウキとアカスリ予約の電話を入れた。

すると「実は先月一杯で退職しまして、移動したわけでなく仕事を辞めたのです。お得意様にも一切告げずに辞めました」と受付の方が言った。
めまいがして最後まで聞くことができなかった。
その日はアカスリをすることをやめた。

めったにやらない爪のお手入れ。
年に2-3回やればいいほうだが、いつもココと決めているサロンがある。

「アカスリ師さんが急に辞めちゃってさあ、気に入ったヒトがいなくなると厳しいなあ」と、世間話をしながら手入れをしてもらう。

すると「言いにくいですけど、じつは赤ちゃんができて、このあとしばらく休みます」とのこと。

おめでとう。ほんとうにおめでとう。よかったよかった。
わたしなんかめったに来ない最底辺客なので大丈夫です、どうぞ無事に産んでね、と申したものの、涙目。

なんかこのあたりの話、前にもしましたね、きっと。
よっぽど衝撃だったんだね、自分。

今年はそんな年だった。

それでも爪は伸びるしアカはたまるし歯は汚れる。
(髪は自分か実家で切るし帽子をかぶるからいいとする)

そのヒトやそのヒトの仕事に付いていく昔ながらのビジネスモデルは、これからの重要なキーポイントだと思う。

マニュアル通りのマスな仕事全盛から回り回ってふた回り。
気が届き見える範囲では、互いが相手に礼を持ってきちんと対応する。
それこそがふつう、であってほしい。

ペコペコお礼を言うとか、何か特別サービスがつくとか、そういう次元ではないです。
いい仕事をしてもらって対価を払い、また来るってこと。
件のアカスリ師さんとは、ほとんど口をきいてません、わたし。
それでも通じ合っていた自信はある。

来年からは、得意のご指名ができない。
出たとこ勝負でイチからやり直し。
新しい出会いを期待するのか、過去を引きずるのか、わからない。

2016年は気持ちを強くして望みたい。
って、どんな?
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by kerokikaku | 2015-12-22 21:41 | ものすごくその他 | Comments(2)
Commented by gongxifacai at 2015-12-23 12:27
それで私も未だに経堂まで美容院に通っているんだけど、
もうそろそろ出たとこ勝負に出てみようかなぁ、と迷う今日この頃です。
Commented by kerokikaku at 2015-12-23 14:34
gonhgsyahxa様
そう、ここからが本当のポイントで、感傷に浸りつつも次へ移行し、すっかり忘れること多々。
良し悪しでなく替えが効くこともあります。
あなたじゃなきゃ、これじゃなきゃ、と言いつつもゲンキンだったりする。
新しいことには気合がいりますが、新天地真鶴につるりと馴染んだ御方様に学ぶこと多し。



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