2016年 02月 14日
2016年2月田中学校ー3 NEWキジー
全国一千万の「紺定」ファンの声がこだました。
川口の田中紺屋、屋号「紺定」。

そりゃあ、こだまするでしょう。

「そ、その布、どうなの? どうしたら? どうするの!!!」
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ええ、承知しております。
もちろん承知しております。

じらすわけではないですが、実はワケありでして。
おとなとおじいちゃんとおばちゃんの。

さまざまな事情が絡み合い、現状はこちらをお出しできない。

わたしだってヨダレを拭いているんです。
みなさんと同じなんです。

今は出せない。
いじわるじゃない。
ちょっとオアズケとのこと。

しかるべき頃合いを見計らい、平和にご案内できる佳き日まで。

固唾を飲みつつヨダレを垂らし、リバーマウスを見つめていきたい。
非力なけろ企画は、草葉の陰より指をくわえ、耳ダンボで朗報を待つのみ。

どうか諸君。
一緒に震えて待ってはくれまいか。
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そして、囲炉裏端でおもむろに本を広げる御大。
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本といってもただの本ではない。
重さも中身も半端じゃない。
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かつての田中昭夫応援団、三彩工芸 故藤本均氏の本。
染織家 岡村吉右衛門氏の著書。
各地で型染布を探し訪ね、その裂を貼って編集した、これ以上ない裂見本帖。

藤本氏は、30代だった田中昭夫をがっちり見込んだ。
先見の明とはこのこと。

昔の型染ハギレを渡して「こういう布を作りなさい」と焚き付けた。

田中はその通り作った。
没頭した。
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どっかにオレの布もあったよなあ。
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あったよ。何枚もあったよ。
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藤本氏の焚き付けがあったからこそ、田中昭夫は正藍型染仕事にのめり込んだ。
そして存分に力を発揮した。

「オレは藤本さんに育ててもらったようなもんだ」と言う。
言葉少なにも、深く感謝しているのはよく分かる。

紅型の本も見せてくれた。
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おーい、6冊しか作っていない内の4番目って。
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これはわたしの知る紅型ではない。
べつものだ。
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なんてすてきなの?
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やわらかな染めと柄
軽みとかわいらしさ。
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紅型ってこんなにいいものとは。
誤解してた。
すみません。
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ふと傍らに、薄紙でくるまれた白生地が何反かあった。

一瞥で、上質でそして古いものとわかる。
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こ、これは。


お世話になった藤本氏が亡くなって久しい。
それでも藤本氏への恩を忘れることはなかった。

これらの豪華本は、藤本氏が「田中君に」とわけて下さった。
律儀な田中は、お代を払っていないことが今もって気がかりだった。

ある時思い立って奥様へ連絡をしたそうだ。

ほどなく、美しい手紙が添えられ、この布が届いたという。
短く強くやさしいお手紙。
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藤本氏が最後まで大切にとっておいた珠玉の白生地。
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80歳を超えていまだ現役続行の職人に、それを託すと言う。
その意味。


手引きの綿。
たぶん韓国の布。
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透明感のある、羽衣のような絹麻の布。
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御大と黒幕は夢中になって布を見入る。

「こんな上等の布、オレは染められないよ」
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そうつぶやく御大に
「田中さんが染めなきゃ誰が染めるの!?」と言い切る黒幕に、まったく意義なし。

貴君以外にいない!と、わたしもどさくさで援護射撃する。
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そして例の新窯で、手持ちの岡崎木綿を精錬してみたそうな。

数十年前、愛知三河は岡崎の工場で「田中仕様」として織ってもらった白生地。
これで作った帯は締めやすいと評判だ。
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どれどれ。
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なかなかよく出来た、と満足げ。
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板場には染めかけの布があった。
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どんな仕上がりになるのだろう。
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ちなみに昨春、秩父太織を染めている時はこんな風だった。
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わたしレベルの理解では、この段階ではイメージがつかみづらい。
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で、仕上がりはこんなでしたっけね。
途端にイメージできましたね。
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秩父太織のふたつは、頒布会でよいところへ渡って行ったっけ。
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ともかく。

盛りだくさんのリバーマウス。
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毎度驚かされてばっかり。
ベニバナのおひたしを食べないとやってられない。

NEW窯あり、藍の蒅入荷あり、珠玉の白生地入手あり、岡崎木綿の精錬成功あり。
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これを要約するに。

御大はやる気だってこと。
これからも作るよってこと。

じぇじぇじぇじぇーーーーーーーー!


帰り際。
〆の言葉として、黒幕から御大へお達しがあった。

一、藤本夫人より譲り受けた大切な生地で、これが最後と言えるだけの渾身の染めをすること。
二、新窯で精錬した岡崎木綿でも、引き続き渾身の染めをすること。

「わかった?」と言われ、御大は「はい」と答えていた。
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やる気まんまん80歳!

不肖けろ企画からも「がんばりたまえ、田中君」と。
直接述べるステージにないので目の前からテレパシーを送っておいた。

ちなみに、ケータイなる文明の利器を入手していた。
かけるのは不得手だが、受けることは出来るんだぜ。

今度、けろ様から直々にご指導つかわす。
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これにて「2016年2月田中学校」を終わりにします。
現場から以上です。
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そしていつかに続きます。

じぇ。
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by kerokikaku | 2016-02-14 21:50 | 正藍型染師 田中昭夫 | Comments(10)
Commented by 津田千枝子 at 2016-02-14 22:19 x
藤本玉子さんのお手紙は震えました。玉子夫人も素晴らしい見識の持主。この見事な繋がりに感動です。
Commented by kerokikaku at 2016-02-14 22:26
黒幕様

藤本氏のご意志がそのまま現れているようです。
2016年のリバーマウスにキラーパス。
言葉もでない。お見事でございます。
Commented by 津田千枝子 at 2016-02-14 22:37 x
こういう人間関係から垣間見える 深さ。素晴らしい。
Commented by 柳蛙 at 2016-02-15 01:59 x
ありゃー
しぼんでませんね、ちっとも。
これは・・・またちまちまとお金を貯めねばなりませぬ。
全国のライバルの皆様に戦々恐々としつつ、来る日に備えて。
Commented by kerokikaku at 2016-02-15 18:08
柳蛙様
イカリ柄の反物を見た時、すぐに柳蛙さんのお顔が浮かびましたよ。
その節はほんとうにありがとうございました!
そしてまさかのto be continued。
第2幕か3幕か、はたまた10幕目かが始まる予感で、恐々で打ち震えております。
Commented by chi-colla at 2016-02-15 19:56
お二人の前にひょっこり出てきたお手紙・・・
援護射撃してくださいって 藤本さんご夫婦の心感じます・・・。
まだまだ続くことが嬉しいです。
津田さん けろさん 応援してます!!
Commented by kerokikaku at 2016-02-15 21:53
chi-colla様
うちら、昨年の頒布会と通販をもって応援団を引退したはずなのに、おかしいな。じぇじぇじぇ?
Commented by 津田千枝子 at 2016-02-15 22:20 x
chi-colla様
引退するはずのヒトの応援団を引退したはずが、何故かまだ続きます。その応援をしてくださって、けろクロ 感謝申し上げます。
Commented at 2016-02-17 15:45 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by kerokikaku at 2016-02-17 18:50
toko様
さすがにほんとうに着尺となると、御大の手から、もう生まれません。
大切にお仕立て中とのこと、有難いことです。
匂いを嗅ぎナメる、なんて、マニュアルにはおこせない。
幸せな布です。御大にも伝えておきます。


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