2016年 02月 24日
御大、再、開業
NEWカマーを手に入れた川口の御大、その後。
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の前に、別件として。

梅花の候。

お上に申し告げる時期が近づいてきた。

慌てているみなさまもいらっしゃいましょう。
かく言う我も。
リバーマウスの御大も。

そこで現状の棚卸やらのため、リバーマウス再訪の2月田中学校。
こちらとしても在庫は把握しておいてよいだろう。

で、棚卸の手伝いに来たくせに、ひと使いの荒いけろ企画。

「座布団カバー、何枚か数えて下さいね」
「うん、わかった」と、おとなしい御大。
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おかげさまで着尺はなくなった。
帯地は少々あり、あと小品少々。
股引は残1枚とかね。

あっさりとした棚卸であった。

書類を整え、バスに揺られ、一緒にお上の元へ出向く。
御大らしいキッチリとした帳簿を見せ、これで合っているかの御目通しを乞う。
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そこでたまげたこと、ひとつ。


こちらの、リバーマウスの御大。
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数年前に『廃業届』を出していた事実が発覚。


『廃・業・届』

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は・い・ぎ・ょ・う。

廃?業?


おもむろに書類控えを取り出した横顔を見て、ポカンとした。
おいおいおい。

「うへぇ!!」と叫んだものの、ああ、そうだったのかと。

それ早く言ってよ、と言いたい口をぐっとつぐむ。
引退宣言もしていたことだし、それはそれで正しいけれど。

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仕事以外は何にもやることのない御大。
世間話さえ出来やしない。

例えば天気の話をしても「藍の調子が」「布が乾かなくて」等々、すべて仕事の話に直結する。

何年も何十年も染布を作り続けてきた。
売れようが売れまいが作り続けた。

お察し通り、帳面はキチンとつけていた。
しかしある時「売れてないのだから、もういいですよ」的なことをお役所で言われたとか。
何かのタイミングで『廃業届』を出していたようだ。

『廃業』したところで御大の毎日が変わるわけもなし。
やはり作り続けた。

思いを尋ねたとして「ほかにやることないから」という返事に決まっている。
売れる予定も売る予定もありやなしや。

その後、かの騒動があった。
作りためた染布は生きたのだった。

いいところへ渡って行った。
おかげ様でほんとうによかった。


そしてそして。


あのNEWカマー見学のほんの数日後。
「100m分をやったよ」と連絡があった。

染用布100mをカットしたということらしい。
ほんとですか?

にわかに信じがたい、なかなかの仕事量。
その確認の再訪でもあった。

大切に保管していた広巾の岡崎木綿生地。
それを帯地用に半分カットし、端ミシンをかけたという。

「ミシンがけは、もたもたしてダメだ」と言いつつ、次なる染用布の準備。
半分巾として、帯地が5mとすると40本分。

ほんとでした。

アンティークすぎてポイかと思った「自動すすぎ機」が、轟音をたてて稼働していた。
端ミシン済みの用布が、順番待ちで泳いでいる。
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まず釜で精錬した後、これですすぐ。
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ころ合いをみて、まとめる。
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横の水槽に移す。
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竿を使ってまたひとつづつすすぐ。
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まだ途中。
一連の作業を何度も繰り返す。
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水元仕事。
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この布でやるんですね。
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新しく染めるんですね。
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釜の水はラクラク排水ってか。
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あーあ。

道すがら、どっかにレンズ、落としてきちゃったね。
そーゆーところも御大だよね。
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おかげで字が書きづらいっておっしゃる。

それでもいいってお役所も言うものですから。
不肖わたくしの代筆で済ませときました。
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リバーマウスの御大こと
正藍型染師 田中昭夫 80歳。
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まさかの『開業届』出してきました。

ええ、『開・業・届』です。

職種は「染色工芸」にしました。

新人☆NEWカマーです。
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もお。
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まったく目がはなせない。
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たまげるね。
この布のために新しい型も彫るそうだ。

田中昭夫応援団こと、田中ガールズこと、TGの方こそ、解散引退じゃなかったっけ。
ええっと、なんだっけ?
おーい。
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ともかく。

御大のやる気が止まらない。

たまげたぜ。
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春になったらば「暫定☆見守り団」として、平常心でそろりと訪ねてみたい。
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by kerokikaku | 2016-02-24 23:02 | 正藍型染師 田中昭夫 | Comments(9)
Commented by gongxifacai at 2016-02-25 13:10
まさかの「TG」再結成か。
次回はぜひお供させてください。
仕事、休みます!
Commented by kerokikaku at 2016-02-25 15:59
gongtayaxai様
つぎがいつなのか。
震えて待とう、ホトトギス。
Commented by team-osubachi2 at 2016-02-26 13:58
「廃業」届けってあるのを初めて知りました!
>「自動すすぎ機」
あすこに水が入って、あの重たそうな機械が動いてるってことに
ビックリしました!終わってない・・・。
生涯現役挿絵職人めざして、私もこれから歩む道の先に、
御大表示掲げておこうと思います。笑
Commented by kerokikaku at 2016-02-26 18:30
team-osubachi2様
自動すすぎ機は、ロボコンが煙を上げているような音がします。

さいきん開業したわけで、生涯現役はまぎれもなく。。
Commented by 津田千枝子 at 2016-02-26 23:01 x
それにしても、布作業をしている時のおじーちゃんは、生き生きしてるね。
Commented by kerokikaku at 2016-02-27 14:39
つんのめってすっころばないか、それだけがしんぱいです。
Commented at 2016-03-11 23:11 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by kerokikaku at 2016-03-12 10:43
kema様
嬉しいコメントをありがとうございます。
なんというご縁なのかと光が射した思いで拝読しました。
よくぞ拙ブログにたどり着いて下さいました。
田中本人は宣伝や説明をせず(できず)にただまじめにやり続けただけ。
結局は染布のちからだけでみなさんに伝えています。
やりたいようにやるのは、言うのは簡単ですが摩擦もあっただろうし経済もたいへんだし孤独だったと思います。
わたしたちは齢80を越えてから会ったので、時々おじーちゃん扱いで談笑できますが、もし往時の田中さんだったらこの一連の騒ぎにはご対応頂けなかったでしょう。
一昨年の「引退宣言」の頃とは別人のようにやる気になっています。但し、御歳はとられました。
どこまで出来るのか、どういうカタチで皆様にご案内できるのか。
御大のご様子をこっそり伺いつつ、考えています。
Commented by kema at 2016-03-12 18:01 x
作り手さんのお人柄がわかると、作られた物への愛情もぐんと深まりますね。
本当のことがしたいと一途にやってこられた田中様の職人魂に感動しました。
そして、失礼を承知で申し上げますが、時々天然でお茶目な所もあるのですね。
けろ様、津田様のおせっかいがなければ、知りえなかった情報です。
つないで下さった事、本当にありがとうございます。
これからも楽しみに読ませていただきます。
皆さんのおじいちゃま田中様にも、ご無理のないよう楽しんでいただきたいですね。


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