2016年 05月 29日
川口5月田中学校 奥の院その2
板場の奥にごっちゃり置かれた段ボール群。

染め損じ布や、使わない白生地や、不要と思われる素材置き場と認知している。
じっさい、上から見えていたものはそんなのばっか。
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かつて我々は、田中紺屋のすみずみを捜索し、あまたの染布を救出してきた。

御大からの信用が現在の半分しか得ていなかった頃につき、家探し強盗まがいであった。

「もうないよ」という御大の言葉を「はいはい」とまるで信用せず、勇気を持って田中紺屋の森に分け入った。
奥の院と呼ぶ押し入れや、板場の裏を探すこと数度(というか毎度)。

これもあった、あれもあったと、お宝布を救い出し、昨年青山での頒布会に出展した。
着物は着ないけどハギレは欲しいという皆様の熱いニーズにお応えできた。

着尺と帯地をメインとするならば、ハギレはそれに次ぐサブメインだった。

「もうなんにもないよね」と何度も確認した。
根こそぎ救出済み。

の、つもりだった。


糸の下、段ボール箱の中に怪しい布が見えた。

あ、田中さん、すみません、ちょっと、どいてもらっていいですか。
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なにこれ、出てきたじゃない。
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そこのけ、そこのけ。
ちょっとぉー。
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あるじゃーーーーーーーん!
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それは半纏のウラに使ったやつだな。
袋物のウラ用に切ったやつで、どうしようもないよ。
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ぜんぜんどうしようもなく、あ・り・ま・せ・ん・っ!
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鳶職人半纏の襟部分。
こんな仕事もしていたんだね。
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きゃー!ラブリーな水玉。
見たことない柄。
ぜったい今では作れない、貴重な広幅じゃない!
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なんでここにあるの!

広幅を地白にし、色差し、藍濃淡で、すっきり仕上げるのは至難のわざ。
裏が藍一色に染まっているので、表裏のコントラストがたまらない。
どうしてここに寝かしているのかを、ご説明いただきたい。
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そうだっけと、すっとぼける御大。

薄藍をかけた水玉もあるし!
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唐草花の広幅も出現し、問い詰めると「これは柄がよくないと思って(御大の主観です)出さなかった」と弁明が入る。

よくなくなくない。
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薄手綿の広幅も出た。
手ぬぐいにいいんだ、と聞こえ、思わず声を荒げてしまう。

何が悲しくてアナタ、わざわざ難儀な広幅に染めて、手ぬぐいに切り分けるんですかぁああああ。
アタマ痛すぎ。
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「なんにもない」はずのパンドラ箱には、数十年眠りっぱなしのお宝布が、まだあるとみた。

わかりやすく言うと、いまのわたしは鼻血を無表情で垂らしているイメージですね。
おでこに縦筋を何本も入れながら。

武者震いする。

これ、今日ぜんぶ、やりきれない。
日をあらためて、どげんかせんといかん。

どげんかします。
お約束します。

みなさま各位。
ブルブル震えて、来るべき佳き日をお待ちいただきたい。

情勢が悪くなり、遠くへ逃げる御大。
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発掘された藍無地ハギレに、アイロンをしずしずとかけている。
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隣の板場に移る。

御大にとっては、こっちがメインなんで。
仕上げまで、まだヒト仕事しなくては。
いいも悪いも、終わったことには執着しない人である。
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着々と進めています。
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パンドラ開封で高まった心臓を鎮めるために、お茶でもいただこう。

戻る道すがら、庭に分け入る御大。
ベニバナが植わっていた場所だ。
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心臓によいとされるベニバナのおひたしをいただいたのは去年の5月だった。

昨年の青山頒布会に向けて。
訪問のたび、奥の院&パンドラ箱の出現に驚かされ、心臓がすっかり弱っていた我々に、おひたしをふるまってくれたことを思い出す。

今年はぜんぶダメになったという。
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1本しか育たなくてさ。
後生大事に添え木されたベニバナ1本。
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これじゃあ、心臓用のおひたしに足りない。

笑えない。

あとちょっと続きます。
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by kerokikaku | 2016-05-29 16:15 | 正藍型染師 田中昭夫 | Comments(0)


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