2017年 02月 13日
水甕祭
「寒明け蒅」がいつ届いてもいいよう、準備する。
今やれることはそれのみ。

藍液自体は元気。
腐っているわけではない。

善玉菌たっぷりの、いきいきとした田中紺屋の発酵液。
藍が薄くなっても、寒くなれば火壺に火を入れて世話はかかさない。

藍色成分「藍分」だけが足りない。
そこへ、届くであろう蒅を足したい。

今回は時間がないのでイチから建てなおさない。
上澄みエキスを残し、新しい蒅を足す。
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誘い出し、というやり方。
ぬか漬・カスピ海ヨーグルトを思えば分かりやすい。

「空にしておくとさ、地震がきたら甕が割れるから水を張っておくんだ」とのこと。

紺屋に水甕。
2月みずがめ座のシャレにもならない。


リバーマウスことリバマこと川口へ行くと、いつだって想定外の事態。

ただの水甕ではなかった。
あまりの大作業に、言葉を失う。
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2月田中学校。
こんにちはの挨拶も出ない。
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水甕祭がはじまっていた。

何があっても驚くまいと誓ったのに。
心臓のムダ毛もボーボーなのに。
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こりゃ、簡単じゃない。
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ステンレス甕に藍液を移し、水で薄め、有効な上澄みエキスを大谷焼甕へ戻す。
底にたまった澱は捨てたい。

フツーの大きさの藍甕と思うなかれ。
2人がかりで作られたという、飛び抜けてデカい大谷焼3つの甕。

入れ替えが終わり、甕はエキスで満杯だった。
この作業で一週間かかったそうだ。

藍液を溜めているのは「ヤール巾&インド120cm広巾」用のステンレス大甕。
家族風呂より大きく、おぼれる深さ。

「もったいないからさ」と、使っていない手前の藍甕にもエキスをとっておく。
無駄液どころか貴重な液。
PH管理されていれば長期保管できる。

「こんな作業もう出来ない、最後かもしれない」
それでもとっておかずにいられない。

この意味は深い。

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「寒明け蒅」撮影に来たカメラマンは、まさかの「水甕」撮影。
だって、蒅届いてないんだもの。

しかし「藍液の入れ替え」という、決して世に出ることのない陰の仕事が撮れた。
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「藍建」「型付け」「藍染」
スター作業とは比べ物にならない、超マイナー重労働作業。

藍染めを本気でやるとは、こういうことだった。

小手先でやる藍染めと、わけが違う。
カラダ全体を使い、水も場所も気力もいっぱい使う。

年寄りのやる仕事ではない。
でもやる。
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ひととおりエキスは確保した。
あとは水で薄め、PHを下げ、廃棄する。

「これは畑にもいいんだ、ナスなんか沢山なるんだ」
栄養分の多い発酵液をむざむざと捨てることに躊躇している。

莫大な量の水で薄めないと、捨てられない。
捨てるために、莫大な量の水を使う。

「バカやってるけど仕方がない」
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水槽にポンプを沈め、極太ホースでステンレス甕へ水を入れる。
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水槽と甕のあいだを、おぼつかない足取りで何往復も。
手元スイッチなどと、洒落たシステムはない。
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わあ!
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目の覚めるようなケミカルブルーは、正藍のアワブクが酸化しただけ。
染めても色にならない。
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これを、水で薄めに薄め、捨てたい。
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澱がポンプに詰まらないよう、かき混ぜつつ排水する。
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ここまでで1/3とは。
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これこそ甕覗き。
試しに白生地を突っ込んでみる。
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染まっているような。
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干してみる。
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薄くさわやかな水色を「甕覗き」と呼ぶが、こりゃダメだ。

甕覗きカラーと、ほんまもんの甕覗き色は違うんだぜ。

ここまで藍がヘタっていた。
昨秋から、蒅を待って、待って、待って、待って、まだ来なくて。
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ああ、くたびれた。
水甕祭の片づけはあとだ。

見ているこっちもくたびれたって、言えっこない。
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思いがけず、田中紺屋のすさまじさを目の当たりにした。

藍染め仕事とは、こういうことだった。
これをひとりで何十年も続けてきた。

「オレもずいぶんバカやってきた」と自覚していた。
「ほんとだよね」と笑うしかない。

それでも藍バカは止まらない。

寝ても覚めても、何年やっても、いくつになっても。
アタマの中は藍一色。

骨も肉も青く染まっているはずだ。
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寒明け蒅、早く来い。

型付け準備もやりくたびれた。
10本以上やった。

うち、谷さんのレンテン白生地は4本。
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あと1か月、ない。
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【正藍型染師 田中昭夫の新作染め布と、若い衆とのコラボ展】
2017/3/10(金)‐16(木):月日荘(名古屋)
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by kerokikaku | 2017-02-13 22:45 | 正藍型染師 田中昭夫 | Comments(4)
Commented by gongxifacai at 2017-02-14 23:19
なんと12日はフェルトの日ではなかったということが分かったのが11日の夜。
どうせ水甕見学だからという言葉を信じた私がアホでした。
Commented by kerokikaku at 2017-02-14 23:42
電話で「藍を抜いて水張っちゃったよ」との話に「え~水甕~じゃあ今行ってもしょうがないってこと?」と誤解したこと、深く深くお詫び申し上げます。

「たいへんだよ、もういやになったよ」とは言ってましたけど、まさかこんな大仕事って。。
Commented by gongxifacai at 2017-02-15 01:20
いや、あのヒトを理解するのは100年かかってもムリですね:苦笑
Commented by kerokikaku at 2017-02-15 18:51
あと100年分以上のヤール巾岡崎木綿の在庫がありますので、ごゆっくり。

田中の常識、世間の非常識。
だからこそ、あの染め仕事なんですけどね。はぁ。


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