2017年 02月 21日
そうは紺屋が卸さないー2
うまくいかない「寒明け蒅」の藍建て。

余計なことをして、藍がダメになっては大変だ。

御大を、しばし藍甕から離すのが賢明か。
d0182119_12405512.jpg
この日はゲストサポーターが駆けつけてくれた。
文字通りの「若い衆」。

骨董市や古本屋を巡り、とうに廃刊の藍染め文献を根こそぎ蒐集、愛読しているツワモノ。

2年半前の自宅紺屋展ツアーからのキーパーソン。

どちらも、ちょいとした変人です。
なので気が合うんです。
d0182119_11342827.jpg
本日のメイン作業は、帯地反物の計測。

若い衆と用務員。
サイズを測ることはできるが、その後が不得手であった。
d0182119_19382355.jpg
「田中さん、もしよければ、反物を巻きなおすの、手伝ってもらっていいですか」

気を紛らわせるにはこれしかない。
御大は、こういう作業も得意とする。

案の定、おとなしく手伝ってくれた。

丁寧仕事は、やはりうまい。
みるみる巻き直してくれた。

手が早く、仕事がすぐに終わっちゃうのがやや難点。
d0182119_19383502.jpg
いま、甕場は、立ち込めた煙でもうもうとなっている。

藍甕を温めるため、火壺で炊いているおが屑の煙だ。

甕場だけでなく、別室にも煙は入ってくる。
ここにいると、ものの数分で燻られる。

リバマでは、染め布だけでなく人間の燻製も出来上がる。

ファブリーズなど生易しいものでとれない。
帰りの電車で身を縮めるほど、強力スモークされる。

自宅へ戻ると、リバマを思いつつ、速攻で洗濯機を回すのが通例となっている。
d0182119_10454341.jpg
さて、日も暮れた。
リバマを辞す。

なんとも歯切れの悪い一日だった。
d0182119_19384750.jpg
帰り道、この非常事態を、黒幕こと型染作家 津田千枝子に相談する。
黒幕でさえ、このツブツブは分からないとのこと。

藍建て数日は、一日一日がデリケート。

翌日、黒幕はすぐさまリバマへ赴いてくれた。

第一に、ツブツブの正体を突き止めたい。
第二に、慌てたことをしないよう、御大を説得する。

これは何か。
蒅に何か混ざったのか。
d0182119_19375409.jpg
黒幕いわく、これを乾かして解明できたと。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

寒明け蒅は、パッと見、やわらかで細かな腐葉土タイプ。

よくよく観察してみたらしい。
d0182119_12380666.jpg
アイツだ。
d0182119_23353394.jpg
さすが名探偵クロマク。

ツブツブの正体は「藍の種の殻」だった。
「種のまま」も少量混じっていた。
d0182119_19555073.jpg
ちなみに、去年収穫した藍の種がこちら。
d0182119_19555738.jpg
ですね。

少し考え、よく見ればわかることだった。

とはいえ全くの想定外。
藍の種の殻が混じるなど、あるはずのないこと。

正藍蒅を建てて45年の田中紺屋。
甕一面、大量のツブツブ出現に困惑した。
慌てるのもしょうがない。

阿波徳島の蒅事情も、変わってきているのかもしれない(これはまた別の気掛かりな問題)。

なぜ今なのか。
愛染様の思し召しか。
d0182119_11314971.jpg
正体が知れれば、多少は安気。
そのうち底に沈むだろう。

「殻入りの蒅」となると、その分、蒅を足したほうがいい。

石灰などでアルカリを高くしすぎると、建つのに時間がかかるので要注意。
余計なことはしてはいけない。

以前、御大は「藍は分からない」と言っていた。
ベテラン藍染師でも、あぐらはかけない。

世話が焼ける。
だからかわいい。


ともかく。
納得のいく仕事をするのが「紺定」の使命だ。

3月の月日荘展が目標ではあるが
*万が一、間に合わなくても仕方ない
*慌てた仕事をしない

黒幕にそう指図され、うなづいていた。
時間がかかろうとも「紺定」印の付けられる仕事をするべきだ。


楽しみにしている皆々様におかれましては、震えて待たされてばっか。
でもきっと、この緊急事態をご理解頂けると信じている。


【田中紺屋「紺定」の最重要ミッション】

-慌てた仕事をしない
-渾身の染めをする

これしかない。

d0182119_13095273.jpg
つるりと簡単な染めなんて、そうは紺屋が卸さないのだ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【正藍型染師 田中昭夫の新作染め布と、若い衆とのコラボ展】
2017/3/10(金)‐16(木):月日荘(名古屋)
d0182119_13084254.jpg




[PR]

by kerokikaku | 2017-02-21 18:46 | 正藍型染師 田中昭夫 | Comments(0)


<< 叱られて、建てて、飲んで、金太郎-1      そうは紺屋が卸さないー1 >>