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2014年 10月 31日
苗族刺繍博物館へ 1/2
「東海地方出身でありながら、まさかの未訪ですかい?」と、しばらくモグリ扱いであったが、このたびめでたく脱出。
各方面の御計らいの元、苗族刺繍博物館への訪問が叶った。

しかし、あまりのことで、内容の万分の一も見られなかった。

と、まずは言いわけから入りたい。

「みなさん、次は泊りで来たいとおっしゃいます」と館長ミズヨさんが言われるとおり。
一回で見ようってのは、そうとう甘い。

わたくしの実家のある三重県四日市から愛知県常滑までは、船さえこげば海のすぐ向こう。
最短距離の白ラインでチャーッと行ける。

なのに航路がないため、名古屋経由の赤ラインでぐるりとせねばならない。
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どうしてもボヤいておきたかった件は、以上です。


苗族刺繍博物館は、愛知県知多半島、常滑市に位置する。
2年半前の2012年4月に開館した。

55ある中国少数民族のひとつであり、多くは貴州省山岳部に居住する、ミャオ族刺繍の個人宅コレクション館。
完全事前要予約、平日のみ、4名まで、駅からもそれなり等、様々なハードルを越えても行きたかった。

車で訪れると、到着まぎわに最大のトラップがあった。
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「目的地周辺です、案内を中止します」とカーナビが言ってからの似たような民家の出現に、第一のめまいを起こす。
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ああ、こちらでしたか。
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築120年の古民家に見事にしつらえられた美しい中国家具と調度品。
そして館長ご夫妻の温かい出迎えを受ける。

アンティークの銘々盆に、谷レンテン豆敷に乗せられたコーヒーと柿の葉を皿に見立ててお菓子をいただく。
この時点ですでに興奮、何の画像もナシ。
先が思いやられる。

しばし歓談の後、2階のミュージアムへ。
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全体画像もたったこれだけ。

だってね。
「これ見てください」とミズヨさんに最初に見せていただいたものが、超近視眼的な刺繍だったのだ。
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拡大鏡の「0」~「1」の数字の1目盛が1mmです。
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数字の入っていない目盛の線は、この際無視していいでしょう。
わたくしの華奢な指先が、比較の役に立った。
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英世の顔まで届かない。
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なぜこんなに激しく細かいことになっているのだろう。

貴州省の山間部に居住する苗族は、厳しい生活環境の中で子供を育てて生きていかなければならなかった。
布目から邪悪なものが入り込むと信じられていたため、布目を埋めつくすようにみっちりと刺繍を施した。

苗族の女として生をうけた者であれば、子供から老人まで皆針と糸を持った。
当然うまい下手は結婚の条件のひとつでもあった。
文字を持たないので口頭伝承で後世に伝えている。
たまに刺繍途中の布があるがそれは途中ではなく、手法サンプルの意味がある。

祈りと民族の誇り、さらに高度な美意識と手先の器用さが、苗族の宇宙的な刺繍を生み出した。
残念ながら現在ではお土産用に作られてはいるものの、ここまでの精緻な刺繍はほとんどなくなってしまった。


つづきます。

by kerokikaku | 2014-10-31 17:22 | 情報として


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