2014年 11月 16日
田中展の黒幕津田千枝子より親愛なる皆様へひとこと申し上げます。 昨日、田中紺屋展は終了いたしました。 皆々様には、様々なご配慮と熱心なご指示、温かい眼差しを頂きましたこと、心からお礼申し上げます。 田中昭夫さんの長板中型職人として幕を引かれる時を、皆様とともにご一緒できたことを心から感謝しております。 今回、特に私がうれしかった事のひとつは、若い方々が多く田中さんのお仕事を見て下さったことです。 かつて 何も知らない若造だった私が、偶然 行った講習会で思いもよらぬ体験をし、今にして思えば それが自分の考え方の原点ともなっていると感じます。 そういう出会いが また 今の若い感性の中に 響いて、真っ正直で 本当のこととはどんなものであるかが、心の中に残ってくれたら嬉しいです。 田中さんが 全身全霊で追い続けてきた仕事を、記憶に留めていただけたら、この大馬鹿とも言える 大職人の仕事は、消えることはないと思います。 本当に、皆様 ありがとうございました。 津田千枝子 11/15(土)、いよいよ最後の田中ツアー。 あの人も?まさかこの人も?ヒコーキや新幹線など万障お繰り合わせのご様子。 「都内からなので近くてすみません」と恐縮している方もいましたがオーマイ、そういうことでは一切ありません。 「どちらから」「なぜ知って」と一人一人にお尋ねし、全員様へ感謝のハグをしたい気持ちをグッと抑え(されても迷惑)、川口アトリアからバス2便に分かれて田中紺屋へと移動しました。 当局はツアー段取りを考えていた。 大人数の場合、藍場と板場を2組に分かれて交互にシャッフル見学がベター。 田中さんの興さえ乗れば各所で説明して下さるだろうと。 ライブってのは、いや、田中さんって人は、ナマモノなんですね。 「オレがいっぺんに説明する、二回もやんない」との当日発言にザワっと肝を冷やしましたが、もはやいかんとも。 藍場、板場からあふれでた皆様、田中さんの声も届かなかったでしょう。 せっかくの藍甕も長板も見られたかどうか。説明も聞こえたかどうか。帯地反物も見れたかどうか。 もちろんお茶もでませんで。 そんなバタバタにもかかわらず「こんないい機会をありがとうございました」とお帰りになる皆様の後ろ姿に、わたしの胸はいっぱいでした。 そうは見えなかったでしょうか。 まだこんなにございましてよ。 閉場時間が近づくと、田中翁の動きがにわかに活発化してきた。 囲炉裏に炭をくべ、出前なんか頼んじゃって。 残った数名の方々と打ち上げ会と相成った。 これを待ってたんだな。 津田さんより、田中紺屋の愛染明王様へ寄贈のお酒が開けられ、生きたご本尊様へ供えられる。 出身地秋田の酒とは泣かせるなあ。 花なんかはじめてだ、とまんざらでもなさそう。 しかし宴会前には、ひとり静かに藍甕の世話をしていたのだった。 藍はまだ生きており小さなものは染めるかもしれないが、長板も広巾も無理。 これで引退。 おかげさまで多くの方に知ってもらえて本当に良かった。 弱弱しく引退をつづり数名だけに知らせた最後の案内。 小さな花火だった。 線香花火よりもっと小さく、吹けば消えそうな。 そこに津田さんがポッと火をつけた。 大職人の最後をもう少しどうにかしたいとの思いだった。 あれよあれよで賛同を得ることができ、あちこちより火が追加され、途中火消しにも回ったが(汗)、終わってしまえば尺玉級の美しい打ち上げ花火になった。 ここに田中昭夫紺屋展の終了、川口アトリア展も終了しましたことをご報告します。 皆様のおかげです。 ありがとうございました! で、途中から反物がぞくぞくと発掘された経緯はご承知の通り。 根っからの職人で販売はからきし、、も美談っちゃあ美談ですが、程があると思いませんか。 引退だから、最後だから、これだけの方々が注目してくれた。 しかし"最後の展覧会を2回やる"のはルール違反だ。 でも、頒布会だったらいいですよね。 今回来られなかった方にも、ゆっくりご覧いただけなかった方にも、いいですよね。 まだこんなにあるんです。 掘ったら出てきました。 じつは今回の価格は古いものだと20数年前のまま未改訂。3%消費税導入前の古いおはなし。 しかも事情があって通常よりも安くつけたままだったのでした。 いくらなんでもこれじゃあと、当局は再三田中さんに伝えましたが努力空しく間に合いませんでした。 そんな事情もあり、未来の頒布会では少し値段が上がりますことをどうかご了承いただきたい。 「え~高くなるの~」とどうかおっしゃらないで下さい。 不条理な値上げは予定していません。いままでがあまりにも安すぎたのです。 今回お求めの皆様にはその点はよくよくご承知いただいているはずです。 "値上げ”なんてデメリット情報をお伝えしましたが、非常に残念なお知らせとして、当方の性質上、悪質値上げが出来るタマでもなかろうもん。 だいたいご推察どおりでございます。 そんなわけで、当局は頒布会について動き出しています。 来年の若葉の頃、都心の広めの空間で、2-3日間の開催予定。 こちらのブログであらためてご案内申し上げます。 未来の頒布会について 朗報その1 反物(細巾反物、主に帯地)は変わらず反販売ですが、広巾に関しては切り売りを考えています。 着物は着ないけれど生地は欲しい、自分ではじっこ縫って風呂敷を作りたいと言う方(まるでわたし)には良いと思います。広巾全部ではありません。詳細は後日。※反物は浴衣向けではありません 未来の頒布会について 朗報その2 いちばん最初の出会い、38年前田中紺屋での型染講習会に当局津田が参加した際、染織研究家菅原匠氏の説明を聞いて板書した「正藍染講習会」についてまとめたもの。 こちらをパネルでお見せしようと思います。※本人未許可 他の参加者のほうが熱かったそうですが、じっさい家に穴を掘って藍甕を埋めて藍を建てたのは津田さんおひとりだったそうです。 そしていまや押しも押されもせぬ型染作家という数奇な必然の始まり。 未来の頒布会について その他 たった2-3日の開催ですがご来場の皆様に少しでも楽しんでいただけるようにしたいと思っています。 あ、ワークショップとかはナシです。引退なんで。 田中御大を川口からかつぎだせるかどうか、今からスケジュール調整に入ります。 別件朗報 川口アトリア「川口の匠vol.4 麗のとき」のカタログが出来ました。 正藍染田中昭夫を始め、当展4匠の仕事が出ています。 当局でさえカタログの存在をチェックしそびれていました。 2014/11/16現在サイトにアップはされていませんが、川口アートギャラリーアトリアに問い合わせれば1部500円(送料別)で手に入るようです。 おまけ いまとなっては苦笑いしながらお見せできる、今回わたしがもっとも恐ろしかったモノ。 会期中のある日、田中紺屋の玄関に貼られていたという貼り紙。 貼られた形跡を見て戦慄を覚えた。 この存在を知った夜は震えて寝られなかった。 さて長丁場、お読みいただきお疲れ様でした。 現場から以上です。
by kerokikaku
| 2014-11-16 15:41
| 正藍型染師 田中昭夫
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