2017年 12月 23日
みかん
あと数日しか命がない人がいて、数週前にお見舞いしたもののもう一度行きたくなり、恐る恐る出かけた。

ほんとうに恐る恐る。
ご家族に断らずの、いわゆる無断で。

前のときは、簡単に食べられるものと保湿クリームやらを持って行った。
しゃべりにくそうだったが、それなりに声は張っていた。

肌なんか以前よりよっぽどつるりとしていた。
お土産の封をガサゴソ開けて、嬉しそうにしてくれた。

もうそんな状態ではないだろうな。

いま何かを持って行くのはむずかしい。
悩んだ末、ポッケにみかんをひとつ忍ばせた。

個室に移っていた。
そうか、やはり。

暖房がんがん、音のない、人気もない、日当たりばかりよい、広い個室にひとり。
深く考えないようにする。

そっと覗くと、これ以上ちいさくなれない程ちいさくなっていた。
ああまずい、と思った。

帰ろうとしたが、思い直し、声をかけてみた。
2回目でゆっくり目をあけた。

つらそうだった。
会いに来たと言うと、ありがと、と動かしにくそうな口が動いた。

どっか痛いかを聞くと、ぜんぶ痛い、と小さく答えた。
手をさすってみたが、恐る恐るのへっぴり腰につき、何のマッサージにもならない。
どうしていいかわからない。

みかん持ってきた、と顔の近くに置くと、ゆっくり手を伸ばして頬にあて「冷たくて気持ちいい」と言った。
しばらく頬やおでこにあてていたが、すぐに力がなくなりポトリと落とした。

ご家族の話やいろいろを少し。
みんなに感謝してるんだ、と言った。
やさしい顔だった。

自分の状態は棚に置き、家族のことをこれからもよろしくね、と。
恨みがましさも何もなくて、真っ白で、きれいすぎて、困った。
これがこの人のほんとうなんだと思った。

握手していいかと聞き、手を握らせてもらう。
これほど力のない握手もなかった。

目をつむったので、さよならした。
うんうん、とちいさく頷いたので、終わりにした。

すごーく近いわけでもなく、もう何年も会ってなかったけど、良くしていただいた御恩の忘れられない人。

こんな時に行くもんじゃないとか。
身内でもないのにとか、誰かいたらどうしようとか、もういなかったらとか。
逡巡したが、行ってよかった。
自分本位だけど。
d0182119_17371959.jpg


[PR]

by kerokikaku | 2017-12-23 17:32 | ものすごくその他 | Comments(0)


<< イブにしたこと      お歳暮 >>